有権者の代表としての顔と、権力者としての顔だ。
公務員の給与削減や外郭団体の統廃合などのコストカットをするときは、有権者の代表になる。いわば「スクラップ系」。
「役人はこんなに高い給料をもらってるんですよ!」
「外郭団体はこんなに無駄なことをしてるんですよ!」
有権者に向かってそう叫びながら、役所内の反発を抑えてきた。
大阪都構想や君が代条例などの新たな施策に取り組むときは、大阪市や大阪維新の会の顔になる。
選挙で認められた首長や政治団体の代表として、権力を行使する。「ビルド系」とでも言おうか。
選挙で認められた首長や政治団体の代表として、権力を行使する。「ビルド系」とでも言おうか。
スクラップ系ほどわかりやすくないため、有権者の間でも議論が分かれることが多い。
そうしたときは「嫌だったら次の選挙で落とせばいい」と強弁するのが常だ。
大阪市長選で勝ったのは「スクラップ系」に支持が集まったからだと思う。
大阪市役所の職員が他の政令指定市と比べて多いことや、労働組合が強大な権力を持っていることをアピールし、それらを「スクラップ」することを約束した。
反対陣営からは「大阪都ってどうなるの?できるの?」というような「ビルド系」への批判が多かったが、常識的に考えて大阪市や大阪府を「大阪都」にしてほしくて投票した人が多かったとは思えない。
「とにかく役人たちをやっつけてよ、橋下さん」というスクラップを待望する気分ではなかったか。
で、今回の捏造リスト問題。
この前の選挙で橋下君と争った前大阪市長を支援する市職員リストが見つかったというのが発端だ。リストには職員労組の名前が書かれていた。
それをもとに、「大阪維新の会」の市議が議会で職員労組を追及したら、実はリストが捏造されたものだったことが後にわかった。
作成したのは大阪市の非常勤職員で、自分で維新の会の議員に持ち込んだそうだ。
以前、民主党の偽メール問題というのがあったけど、構図はあれと似ている。
橋下君は大阪維新の会の代表だ。偽物の証拠で労組を追及したことが発覚したのだから、常識的には「ごめんなさい」しかない。
でも、彼は違った。
「議会の追及をきっかけに僕が交通局に調査を指示して、捏造問題が明らかになった。ある意味、組合のぬれぎぬをはらしたわけだから、まったく問題ない」
すごい論法。
大阪市長として、議会から示されたリストの真贋を部下に調べさせ、組合への疑いを晴らした。
僕が調査を指示しなかったら、濡れ衣のままだったんだよ。
どこが悪い?
橋下君が「大阪市長の顔」だけだったら、これで通る。
でも、彼は「大阪維新の会の顔」でもある。
議会で労組を追及したのは大阪維新の会の市議だ。
市議が追及しなければ、職員労組が濡れ衣を着せられることもなかった。
「スクラップ」が支持されるのは、既成の勢力が溜めこんできた「あか」や「うみ」を絞り出すからだ。
デトックスのような爽快感。
デトックスのような爽快感。
でも、大阪維新の会は橋下君が新たにつくった政治団体だ。「あか」や「うみ」はこれからたまっていく。「ビルド」の責任はすべて橋下君が負う。
この二つの顔を使い分けながらバランスをとっているのが橋下政治の真骨頂だと思う。
有権者の議論が分かれる「ビルド型の政治」への批判を抑えるためには、常に「スクラップ型の政治」の爽快感を有権者に示しておかないといけない。
有権者の議論が分かれる「ビルド型の政治」への批判を抑えるためには、常に「スクラップ型の政治」の爽快感を有権者に示しておかないといけない。
そのためには常にスクラップの対象を見つけておく必要がある。
でないとバランスが保てない。
橋下君はいま、関西電力の原発再稼働への反対を強めている。
いわばスクラップ型の政治。
その爽快感が、君が代斉唱の口元チェックや捏造リストなどのビルド型政治のマイナスポイントを少なからず相殺しているのは、間違いない。